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遠い日の北尾根 [遠い日の山]

 涸沢から北尾根を仰ぎ 眺めた。

 岩峰に雲が湧き流れる。 

101010北尾根涸沢 104a.jpg

                                                    H22.10.10

 

 もう ずっと昔の冬

 風雪は続いていたが、雪のコルに設けたテントを出る。

 先輩と二人 北尾根の急峻な雪稜を辿る。

 3峰の凍てついた岩稜を攀じ登り、

 前穂の山頂へ。

 視界はなく 山頂に立つものを追い払うように 激しく風と雪が吹きつける。

 山頂にとどまることもなく 雪の山稜を下る。

 登ったときのトレースはすでに風雪に消され、ルートを探りながらの下降。

 3峰を懸垂で下る。

 空腹を覚え ビスケットを口に放り込む、朝テントを出てから何も口にしていなかった。

 ザイルに結ばれ 闇がせまった雪稜を下る。

 ヘッドライトに白い雪片が流れる。

 暗い雪の山稜、ライトにテントが浮かんだ。 

 

 この先輩とはそれからも屏風や滝谷、岩や雪にザイルを組んだ。

 アルプスやヒマラヤにも足跡をのこした 先輩の面影は今も忘れないが、

 その姿にもうあうことはできない。

 最後の地 を訪れたいと思っているが、ずっと何年も果たせずにいる。 


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コメント 11

山子路爺

来た尾根……夢の又夢ですね。
by 山子路爺 (2010-10-16 15:55) 

FSC梓

to 山子路爺 さん
北尾根を涸沢からみると、いつも逆光で 黒い岩峰の連なりが印象的ですね。
あらためて眺め、岩尾根の険しさを感じました。
できるならまたいつか行ってみたいと思っています。
by FSC梓 (2010-10-16 21:56) 

makiwarikun

凄い経験をなさっているのですね。私には山岳小説の中だけで読む世界です。
by makiwarikun (2010-10-17 19:49) 

tochimochi

北尾根を登って下りたのですか!
私も11月に登ってみぞれの中ビバークし、翌日半分眠りながら前穂までたどり着きました。3峰は登るのに精一杯で降りるなどとは考えもしませんでした。
by tochimochi (2010-10-17 23:30) 

FSC梓

to makiwarikunさん
遠い若い日の思い出です。
いまはとても登れません。
 
to tochimochiさん
11月にビバークして登りましたか、
11月には雪がつくので穂高は厳しくなりますよね。
by FSC梓 (2010-10-18 19:51) 

asa

これはもう、私たちの近づけない世界ですね。
by asa (2010-10-20 23:17) 

FSC梓

to asaさん
雪の穂高、美しくも厳しい山に変わりますね。
正月は穂高という時もありましたが、今はもう思い出だけです。
by FSC梓 (2010-10-21 19:39) 

joyclimb

この地で壮絶な登山を経験されていますね。
冬の高山は未だ登ったことが無いです。
by joyclimb (2010-10-22 22:44) 

FSC梓

to joyclimbさん
今は厳しい山からは遠ざかってしまいました。
花や紅葉をみながらの山もいいですね。
by FSC梓 (2010-10-25 21:31) 

ももこ

私は大山北尾根しか分かりません(笑)
大ベテラン鳥甲は朝飯前でしたね。
by ももこ (2010-10-28 23:01) 

FSC梓

to ももこ さん
冬枯れの大山北尾根、
落ち葉を踏みながら歩いたことがあります。
by FSC梓 (2010-10-30 12:48) 

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