遠い日の北尾根 [遠い日の山]
涸沢から北尾根を仰ぎ 眺めた。
岩峰に雲が湧き流れる。

H22.10.10
もう ずっと昔の冬
風雪は続いていたが、雪のコルに設けたテントを出る。
先輩と二人 北尾根の急峻な雪稜を辿る。
3峰の凍てついた岩稜を攀じ登り、
前穂の山頂へ。
視界はなく 山頂に立つものを追い払うように 激しく風と雪が吹きつける。
山頂にとどまることもなく 雪の山稜を下る。
登ったときのトレースはすでに風雪に消され、ルートを探りながらの下降。
3峰を懸垂で下る。
空腹を覚え ビスケットを口に放り込む、朝テントを出てから何も口にしていなかった。
ザイルに結ばれ 闇がせまった雪稜を下る。
ヘッドライトに白い雪片が流れる。
暗い雪の山稜、ライトにテントが浮かんだ。
この先輩とはそれからも屏風や滝谷、岩や雪にザイルを組んだ。
アルプスやヒマラヤにも足跡をのこした 先輩の面影は今も忘れないが、
その姿にもうあうことはできない。
最後の地 剱を訪れたいと思っているが、ずっと何年も果たせずにいる。







